中国史には「絶世の美女」と呼ばれた女性たちが数多く登場します。
四大美女のように国を代表する美人もいれば、亡国や政変と結びついて語られる悲劇の美女、
詩や芸に秀でた名妓など、美女のイメージは時代ごとに変化しました。
本記事では、『百美新詠図伝(百美図)』などを基に、中国史の有名な美女を
【時代別】に整理し、さらに【カテゴリ別】にも分類して一覧で紹介します。
『百美新詠図伝(百美図)』
先史〜明代までの美女100名(実際は103名)を収録した美人画+略伝+漢詩の総合作品。
清の乾隆57年(1792年)に成立し、顔希源(編)・王翽(絵)・袁枚(詩)による合作として知られる。美人画の典拠として後世に大きな影響を与え、魯迅も愛読したとされる。
美人研究・中国文化史では欠かせない資料のひとつ。
「美人=貞淑・節婦」という儒教的枠を超え、傾国の美女・名妓・伝説上の女性まで含む“多様な女性像の図鑑”になっている点が特徴。
中国四大美女
| 名前 | 時代 | 逸話 | 象徴 |
| 西施 | 春秋戦国 | 越王勾践が呉を滅ぼすために西施を献上し、呉王夫差が彼女に溺れて国を傾けたとされる。 | 落魚 |
| 王昭君 | 前漢 | 匈奴の呼韓邪単于に嫁ぎ、漢と匈奴の和平の象徴となった。「昭君出塞」の物語が有名。 | 落雁 |
| 貂蝉 | 後漢末- 三国 | 董卓と呂布を離間させた「連環の計」の美女として有名。 (ただし史実性は弱く、後世の創作要素が強い) | 閉月 |
| 楊貴妃 | 唐 | 玄宗に寵愛され、安史の乱の混乱で馬嵬坡にて死に追い込まれた。唐代の豪奢な美の象徴。 | 羞花 |
傾国の美女
| 名前 | 時代 | 逸話 | 象徴 |
| 夏姫 | 春秋戦国 | 美貌ゆえに多くの男が彼女に執着し、争いや死を招いたとされる。「魔性の美女」として恐れられた。 | 男を破滅させる |
| 趙姫 | 秦 | 始皇帝の母。呂不韋との関係、嫪毐事件。 | 宮廷スキャンダル |
| 趙飛燕 | 前漢 | 舞姫から⑫成帝の皇后に上り詰めた。子がなかったため後宮で政争を起こしたとも記され、⑫成帝崩御後に失脚。 | 飛燕体 |
| 趙合徳 | 前漢 | ⑫成帝の寵愛を独占し、他の妃や皇子を排除したとされる。⑫成帝急死後、追及を恐れて自害。 | 温柔郷 紅顔禍水 |
| 馮小怜 | 北斉 | 北斉後主・高緯が溺愛し、戦況より遊興を優先したとされ、北斉滅亡の象徴として語られた。 | 享楽 |
| 潘玉児 | 南朝斉 | 蕭宝巻(東昏侯)の寵妃。美しい女性のしなやかな歩みの喩えとされる「歩歩生蓮」の逸話で知られる。 | 享楽 |
| 張麗華 | 南朝陳 | 陳後主が溺れ『玉樹後庭花』に耽った象徴とされ、陳滅亡後に捕らえられ処刑された。 | 享楽 |
| 陳円円 (秦淮八艶) | 明末清初 | 絶世の美女として名声を得る。呉三桂が彼女を奪われた怒りで清軍を引き入れたという伝説で「傾国の美女」として語られる(史実性は議論あり)。 | 伝説化された亡国の象徴 |
中国三大悪女
| 名前 | 時代 | 逸話 | 象徴 |
| 妲己 | 殷 | 紂王に寵愛され、酒池肉林など暴政を助長した妖妃として語られ、殷滅亡の原因の象徴となった。 | 妖妃 |
| 褒姒 | 西周 | 周幽王が彼女を笑わせるために烽火(狼煙)を偽って諸侯を呼び出し、信用を失って西周滅亡を招いたという逸話が有名。 | 笑わぬ美女烽火 |
| 驪姫 | 春秋戦国 | 晋の献公に寵愛され、太子申生を陥れて後継争いを引き起こした「驪姫の乱」で有名。 | 宮廷陰謀 悪女 |
悲劇の美女
| 名前 | 時代 | 逸話 | 象徴 |
| 息嬀 | 春秋戦国 | 息国の姫として嫁ぐが、戦乱で楚に連れ去られ、故国を失った悲劇の美女として語られる。 | 亡国の姫 |
| 虞姫 | 秦末- 楚漢 | 項羽の愛妾。垓下の戦いで最期まで寄り添い、覇王別姫の悲劇として語り継がれる。 | 殉愛 ひなげし (虞美人草) |
| 戚夫人 | 前漢 | ①劉邦の寵姫だが、呂后に恨まれ、皇帝死後に残酷な刑罰で殺されたと伝えられる。 | 惨劇 |
| 李夫人 | 前漢 | ⑦武帝の寵姫。病で衰えた姿を見せずに死を迎え、死後も⑦武帝が幻影を求めた逸話で有名。 | 美人薄命 死してなお愛される |
| 班婕妤 | 前漢 | ⑫成帝に寵愛されるが、趙飛燕姉妹に押されて失寵。 団扇を捨てられる比喩で悲しみを詠んだ。 | 失寵の悲しみ団扇の詩 |
| 大喬 | 後漢末- 三国(呉) | 孫策の妻。孫策の死後に深く悲しんだという伝承が多く、儚い美の象徴として語られる。 | 未亡人の哀愁 |
| 小喬 | 後漢末- 三国(呉) | 周瑜の妻として有名。美男美女の象徴として語られ、 戦乱の中の儚い青春の美として描かれる。 | 青春の象徴 |
| 甄宓 | 三国 (魏) | 美貌と才気で曹丕の后となるが、郭皇后に疎まれ自殺を命じられたとされる。悲劇の美女として語られる。 | 政争の犠牲 |
| 緑珠 | 西晋 | 石崇の愛妾。権臣に奪われるのを拒み、楼から身を投げて死んだ「墜楼の美女」として詩に詠まれた。 | 殉節 落花の悲劇 |
| 珍妃 | 清末 | ⑪光緒帝に寵愛され改革を支えたが、西太后に疎まれ幽閉され、義和団事件の混乱で井戸に投げ込まれ殺害された。 | 改革の犠牲 井戸 |
その他の美女
| 衛子夫 | 前漢 | ⑦武帝の姉の家の歌妓だったが、見初められ、後宮に入る。 弟は衛青、甥は霍去病。「巫蠱の禍」にて自害。 |
| 卓文君 | 前漢 | 蜀の名門に生まれた絶世の美女であり、琴の名手として知られた才女。前漢を代表する天才文人・司馬相如との恋によって名を残す。 |
| 陰麗華 | 後漢 | ❶光武帝(劉秀)の皇后。「妻を娶らば陰麗華」という言葉とともに「理想の妻・理想の皇后」とされる。 |
| 鄧綏 | 後漢 | ➍和帝の皇后であり、のちに皇太后として幼帝を補佐し、実質的に国家を統治した。 |
| 何皇后 | 後漢 | ⓬霊帝の皇后。幼帝の母として政治の実権を握る。 |
| 元明月 | 北魏 | 孝武帝の愛妾。高歓との対立により洛陽を脱出した際、彼女だけを連れて逃亡した。 |
| 胡皇后 | 北斉 | ④武成帝(高湛)の皇后。中国史の中でも特に「淫乱な皇后」として語られることが多い。 |
| 劉楚玉 | 南朝宋 | 弟である皇帝・⑤前廃帝 (劉子業)に対して、自分にも男寵を与えるよう要求し、約30人の美男子が与えられた。 |
| 蕭皇后 | 隋 | ②煬帝(楊広)の皇后。容姿の美しさに加え、礼儀・教養にも優れた。「流転の皇后」。 |
| 南陽公主 | 隋 | ②煬帝の長女。父を殺した一族の家に嫁いでいた公主。 |
| 唐代三大女詩人 | 唐 | 薛濤・魚玄機・李冶は、唐代を代表する女詩人であり、才色兼備の象徴として並び称される。 |
| 花蕊夫人 | 後蜀 | 後主・孟昶の愛妃。詩を詠む才に優れ、宮廷生活を題材にした「宮詞」を数多く残した。花のように美しい女性。 |
| 李師師 | 北宋 | 都・汴京(開封)で名を馳せた名妓で、美貌と芸の才によって皇帝・⑧徽宗すら虜にした。 |
| 趙福金 | 北宋 | ⑧徽宗の娘。「靖康の変」で和平交渉の一環として、金軍へ差し出された。 |
| 李鳳娘 | 南宋 | ❸光宗の皇后。皇帝を支配し「黒い鳳凰」と形容された。 |
| 奇皇后 | 元 | 順帝トゴン・テムルの皇后。高麗から元への貢女。 |
| 秦淮八艶 | 明末清初 | 南京・秦淮河(しんわいが)周辺で名を馳せた名妓たちの中でも、とりわけ才色兼備で名高かった八人の女性。 |
| 洪宣嬌 | 清末 | 太平天国の指導者・洪秀全の妹(あるいは一族の女性)で女性幹部。※血縁関係の有無は議論あり。 |

